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    [20120606]
     東日本大震災では発災以降、心不全をはじめ、ACS、脳卒中などの循環器疾患が有意に増加していた。特に心不全の増加は、過去の大震災疫学調査では報告例がなく、東日本大震災の特徴の1つであることも浮かび上がった。東北大学循環器内科学の下川宏明氏が、3月18日まで福岡で開催されていた第76回日本循環器学会(JCS2012)のLate Breaking Clinical Trialsセッションで発表した。

     下川氏らは、宮城県で救急車で搬送されたすべての患者記録を調査し、東日本大震災の発災前後における循環器疾患の変動を明らかにした。加えて東北大学循環器内科におけるデバイス植え込み患者および冠攣縮性狭心症患者も対象に、震災の影響を検討した。

     救急車搬送の調査は、2008年から2011年6月30日までを対象とした。対象地域は宮城県全域だった。県医師会の全面的な協力が得られたこともあり、宮城県内12消防本部すべてが協力に応じてくれたという。

     調査期間中の救急車の出動件数は、合計で12万4152件だった(救急搬送例の初診時診断率は56.2%)。この全例を対象に、心不全、ACS(急性心筋梗塞と狭心症)、脳卒中(脳出血、脳梗塞)、心肺停止、肺炎の症例を調べた。その上で、発災前後および同時期の過去3年間について、各疾患の発生件数を比較検討した。

     下川氏らはまた、今回の震災では津波による甚大な被害を受けた沿岸部と津波の被害を免れた内陸部では事情が大きく違うと考え、沿岸部と内陸部に分けた解析も行った。

     解析ではまず、各年ごとに2月11日~3月10日と3月11日~4月7日の2期間で各疾患の発生数を比較した。その結果、2011年だけが、3月11日~4月7日の期間の方が2月11日~3月10日の期間より、心不全、ACS、脳卒中、心配停止、肺炎のすべてが有意に多かった。例えば心不全は、2011年の2月11日~3月10日では123件だったが、同年3月11日~4月7日には220件と有意に増加していた(P<0.001)。また、2008~2010年の各年の3月11日~4月7日の発生数は、それぞれ101件、100件、126件であり、2011年の方が有意に高かった(P<0.001)。

     次に、2011年の2月11日以降、4週間ごとの週間平均発生数を追ったところ、心不全は30.8件、55.0件、35.0件、31.0件、29.3件と推移していた。同様にACSは8.25件、19.0件、9.25件、5.0件、10.0件、脳卒中は70.8件、96.5件、82.0件、73.5件、62.5件、心配停止は49.0件、61.8件、46.0件、42.3件、40.3件、肺炎は46.5件、89.3件、60.5件、45.5件、47.5件とそれそれ推移していた。

     過去3年間の週間平均発生数と比較すると、2011年3月11日~4月7日の発生数は、調査した疾患すべてにおいて有意に多くなっていた。

     なお、ACSにおいては、2011年5月6日~6月2日の発生件数が過去3年間の平均週間発生数より有意に少ないことも判明。この点について下川氏は、「ACSの予備軍が前倒しで発生した可能性がある」と指摘した。

     着目点の1つである沿岸部と内陸部の比較では、沿岸部の内陸部に対するオッズ比を調べたところ、肺炎で1.54(95%信頼区間:1.06-2.26)となり、沿岸部での肺炎の患者が有意に多いことも分かった(P=0.023)。

     このほか、デバイス植え込み患者および冠攣縮性狭心症患者を対象とした検討では、不整脈(特に心室性)の増加が見られ、心臓再同期療法(CRT)治療の効果の減弱や冠攣縮の増悪の可能性なども明らかになった。

     この演題に対するコメンテーターとして登壇した秋田大学循環器内科の伊藤宏氏は、「東日本大震災では地震に加え、津波の被害が甚大であったことから、被災者のストレスは多大であったと推定される」と指摘。下川氏らの検討によって、「こうしたストレスは心不全の要因および増悪因子となりえることが示された。また肺炎が沿岸部で有意に多かった点については、津波後の粉塵あるいは冬季であったことの寒冷も関連していると考えられ、このことが心不全増加に関与した可能性が高い」などと考察した。その上で、「今回の研究データは、災害時の循環器医療だけでなく、災害を見据えた日常診療のあり方を考える上で重要な指標となりえる」と評価し、コメントを締めくくった。

    (日経メディカル別冊編集)







    東日本大震災後に心不全が有意に増加、ACS、脳卒中も
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    2012-06-06(Wed) 00:00 ニュース | 編集 |
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